2020年度 勉強会

第1回 2020年2月10日 テーマ『借地権付分譲マンションの「底地(貸宅地)の評価方法及び本件宅地の価額の多寡」について争われた事例』

 

今回は、借地権者が多数存在する分譲マンションの底地の評価方法及び価額について、納税者側が主張する、財産評価基本通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》に該当する"特別の事情がある"と認められた事例です。

一般的な、形態(借地人1対地主1)ですと、仮に途中でそれぞれの権利等が第三者へ売却されたとしても、将来的には、完全所有権化(借地権と底地の併合)がなされていく、というのが有力な考え方です。よって、そのような場合には、将来完全所有権化となる潜在価値に着目した評価方法及び価額、借地権価額控除方式(更地価額-借地権価額)及びそれに基づく価額が重視されます。一方、本件のように、借地権者が多数でかつ借地権の譲渡が容易な場合には、将来完全所有権化の可能性が低くなります。よって、このような場合には、将来完全所有権化となる潜在価値に着目した評価方法及び価額より、むしろ賃料徴収権(地代)に着目した収益還元法及び収益価額が重視されます。

ポイントは、"将来の完全所有権化(借地権と底地の併合)の可能性"といえます。

20200210勉強会補助レジュメ_final.pdf
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裁決書_東裁(諸)平9第83号H9.12.10.pdf
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第2回 2020年4月21日 テーマ『2020.4.1施行の「配偶者居住権及び当該権利が設定された土地建物」の評価関連事項」について

 

今回は、本年4月1日より既に施行されている、配偶者居住権等に関する事項について解説させていただきます。

なお、新型コロナウイルスの影響により、残念ながら皆様に直接ご説明することができないため、動画(約6分程度のショートバージョン)を作成してみました。是非一度ご覧いただき、いつものようにフィードバックをいただけますと、たいへんありがたいです。また、動画については、不慣れな点が多いため、一部お聞き苦しい箇所等がありますが、どうぞご容赦ください。

皆様、どうぞ引き続き健康管理にご留意ください。

20200421勉強会補助レジュメ_HP.pdf
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解説動画(約6分ショートバージョン)
20200421勉強会動画(SV).mp4
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第3回 2020年8月4日 テーマ『借地権の価額ついて、更地価格に借地権割合を乗じた価額から契約減価相当額を控除(建替承諾料 非堅固を堅固へ)して評価することが妥当か否か』について争われた事例の検討 

今回は、ビデオ解説を交えたオンラインライブでの勉強会を行いました。

本件では、土地の最有効使用が土地賃貸借契約により制約を受けている場合(本事例対象地は渋谷区の商業地に存すると推定される)に、当該制約の程度に応じた減価を行うことが妥当であるか否かが争われました。例えば、通常8階建て程度の商業ビルを建てることが可能な地域なのに、土地賃貸借契約の制約により木造2階建ての建物しか建てられない場合などは、当該利用制限に応じた減価を行うことが妥当と考えられます。

本件について国税不服審判所の判断では、"契約減価"を考慮することについては、否定されませんでした。しかし、考慮の方法について請求人(納税者)と異なる結果となりました。前提として、そもそもいわゆる相続税路線価図に記載されている借地権割合というものは、建物の堅固・非堅固が区別されているのかどうか。確かに、"区別されている"とは公表されていませんので、形式的には区別されていないのでしょう。しかし、実態としてはどうなんでしょうか。例えば借地権割合、商業地の0.8と普通住宅地の0.6、この格差はなんなのでしょうか。堅固・非堅固の区別が影響していることはまちがいなさそうですが、はっきりされておらず判断の余地を残しています。

他方、建替承諾料等については、裁判所における借地非訟事件において長年積み重ねられてきた先例があります。よって、慣行としてはほぼ定着しているといえるのではないでしょうか。

これらのことを踏まえて、相続税評価における建替承諾料等の考慮方法については、検討していく必要があります。

01(修正)20200804勉強会補助レジュメ_final.pdf
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裁決書_東裁(諸)H12第144号.pdf
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第4回 2020年9月29日 テーマ『店舗及び来客用の駐車場として法人(同族間ではない)に地代率が6%超で貸し付けられている土地の評価単位及び評価方法』について争われた事例の検討 

今回も、ビデオ解説を交えたオンラインライブでの勉強会を行いました。

本事例では、市街化調整区域内に存する貸宅地(店舗敷地と駐車場)の評価単位と、その評価方法について争われました。

本件の主な論点は、以下の通りです。

①評価単位について

・市街化調整区域内にある場合、原則として建物の建築は不可である。ただし、例外規定があり、本件土地はその例外規定の適用が可能であ

 った。そのため、宅地と雑種地2画地とするか、全体を宅地として1画地で評価するかが論点になった。市街化区域内であれば問題になら

 なかったことが、市街化調整区域内で問題になったのである。管轄行政機関への調査は必須である。

 

②評価方法について

・地代収受率が6%超である場合に、賃貸人と賃借人が同族関係にない場合でも、相当地代通達が適用されるのか否かが論点になった。

 借地権の設定にあたり権利金の支払慣行がある地域において、権利金の支払に代えて地代収受率が概ね6%である場合には、基本通達

 (貸宅地)ではなく相当地代通達が適用される。確かに、同族関係等に限り適用されるとの記載はないのである。

 

今回の裁決書を読み検討した結果、本件貸宅地に対する考え方が当初の事業計画時と相続評価時点で違っていたようです。具体的には、当初被相続人は『地代は高く、但し借地権(法的+経済的観点)は発生させたくない』、一方、相続時の相続人は『地代は高く、借地権(経済的観点)は生じている』と考えていたと推測されます。

不動産事業を行うにあたり重視するポイントして、事業の収益性・相続時の評価減などがあげられるが、どちらにウエイトと置くのか、その重要性について認識させれた事例でありました。

20200929勉強会補助レジュメ_final.pdf
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裁決書_関裁(諸)H30第10号.pdf
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第5回 2020年12月1日 テーマ『地代収受率が6%超の"貸宅地"の評価について(無償返還届出書は未提出)相当地代通達を適用することの可否』について争われた事例の検討 

今回も、ビデオ解説を交えたオンラインライブでの勉強会を行いました。

また、前回に続き、わかりにくいと思われている方が多い「相当地代通達」を取り上げました。なお、前回は請求人(納税者)の主張が退けられましたが、今回は認められています。よって、前回と今回の事例の比較を交えながら、解説を行いました。

 

本件の主な論点は、以下の通りです。

①「相当地代通達」適用可否を判断する場合の要件について

・通常権利金を支払う取引上の慣行があるか否か

・権利金等の授受があるか

・相当の地代が授受されているか

・土地の無償返還届出書が所轄税務署長に提出されているか

 

 

②納税者側の借地権(底地)の経済価値についての認識について

・当然ですが、①当初借地権設定時(賃貸借契約締結時)と②相続発生時では、当事者が異なります。

・①は被相続人、②は相続人等です。

・よって、①は借地権の経済価値を発生させたくなかった(土地は更地の経済価値)のに、②で発生していると主張(土地を貸宅地として評価したい)というような「ねじれ(矛盾)」が生じることで、問題になりがちです。

 

★今回の事例については、当初借地権設定時(賃貸借契約締結時)の地代収受割合等について、原処分庁側の立証が不十分だったことで、請求人(納税者)の主張が認められたようです。

裁決書_金裁(諸)平8第6号.pdf
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★2020.12.01勉強会補助レジュメ_final.pdf
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